第5章 さて、遊びながら白馬へ帰るぞ!

4日目。折り返し。ブーメランは、予定を変更して軌跡を小さくして戻り始めました。これはこれで僕たち二人にとっては必要なことで、まぁ一応想定内のこと。ペアで進むということはそういうことなんです。きっと、将悟さん一人なら、もしかしたらもっと速く、遠くまで行けたかもしれない。(だって将悟さん、岩場になるとめちゃくちゃ速くなるんですよ(笑))でも今回は二人。二人ですべて共有する計画。最後まで二人で行くと決めていたから、僕はここでバテたり、怪我して動けなくなるわけにはいかないわけで、勇気をもってコース変更を申し出た、というわけです。すんませ~ん

予定変更~!
©takebe doryu

朝は3時半。横尾まで、つい4時間ほど前に、睡魔にやられながら歩いた10㎞の道程を戻る。何やってんだか、おれたち、、、とも思いながら、少しニヤニヤしながら走る。昨夜、サポートの努龍君と近江君に「横尾まで来てぇ~」、と本当は言いたかったのはここだけの話です(笑)。体はかなり回復しているぞ!横尾は多くの登山客でにぎわっていた。

この日のルートは、やはり予定変更で、当初は「常念~大天井~貧乏沢~北鎌尾根~槍」というルートを考えていたが、それで行くと、槍につくのが夕方になりそうなので、やめようということになった。槍はやっぱり明るいうちに登りたいね。新ルートは水俣乗越を越えて、天上沢に降りて、北鎌沢右股から北鎌尾根に取りつくルート。大幅にショートカット!でもそれでもいいんです。北鎌尾根をゆとりをもって歩いてみたかったので。

水俣乗越に向けてどんどん登ります。この先が長いという意識があったためか、あっという間に峠へ。ここは東鎌尾根との交差地点。ここまでは一般ルートです。たいして休むことなく反対側の天上沢へ。

雪はほぼ消えていました
それにしても、悪路になるほど将悟さん速いんだなこれが!
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ここからはバリエーションルート。出だしはかなり急でした。ぐんぐん高度を下げます。徐々に傾斜が緩くなっていくが、岩と石がたくさんあるゴーロ地帯でとても歩きにくい。左手にこれから行く北鎌尾根が見えてきた。

北鎌尾根
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槍の穂先も見えてきた!すると、ブ~ンと、聞き覚えのある音が・・・。山頂で待っているはずの藤巻君のドローンが降りてくるではないか。かなり近くまで来た。撮られてるな~と二人で笑いながら歩く。

天上沢の中。このあと将悟さんのポールが、、、、
©fujimaki sho

ここで望月さん持参のシナノのポールがポキッと折れてしまった。歩いていたら岩が少し動いたためだ。さすがのシナノのアルミも耐えられませんでした。一瞬の出来事でした。これからに向けて身が引き締まるな。一息入れるために翔君からもらったワッサーをかじる。そして天上沢を下った時に靴の中にめちゃくちゃ砂が入ったので、それをきれいにはらおう。

翔君、ワッサーごちそうさまです!

さぁいよいよ北鎌沢へ。右股と左股を間違えてはいけない。左股は遭難死亡事故が多発している危険地帯。登りつめると、稜線直前で行き詰まってしまうようだ。右股は水も少し流れている。徐々に斜度がついてくる。途中少しクライミングあり。水量が少し多いところで顔を洗う。気持ちいい!その先で水を補給。ずんずん登っていくといよいよ本格的に歩きにくくなってきた。

右股。最後なかなかでした。
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ザレていたのだけど、落石ありまして、草付きの中を進む。かなり急で、草をつかみながら。しかもその草が、アザミ。最初は、痛い痛い、と言いながらだったが、数分後には全く痛みは感じず。あのトゲトゲのアザミつかまないと登れないので。やはり山登りはメンタルというか気持ち大事ですね(笑)。結構な急斜面を体験できました。夢中になりながら、無事に北鎌のコルに到着し、エネルギー補給。いや~、全身運動ですね。草をつかみすぎて、手が震えていました。ここで時間は、11時50分。もう8時間行動しています。この旅、というか将悟さんとの旅の時間はほんとにあっという間です。だいたいしゃべりっぱなしなんですが・・・・

落石注意
アザミ地帯
コルに到着。体力使いましたな、僕は。
ここまで順調!
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さてここから楽しみにしていた稜線歩きです。緊張感も同時にきてます。基本的には稜線進むのですが、ときどきまいたりして越えていきます。時々霧の切れ目から、はるか遠くに槍の穂先が見えます。かっこいい!登りはかなり急なところがあったり、脆い岩のバンドのトラバースがあったり、やっぱり普通の道とはえらい違いですので気軽に行けるところではないということを改めて実感。行くにはかなりしっかり勉強したり、(ネットやガイドブックに細かく書かれているのもあります)ガイドさんを付けたほうがいいと思います。もちろん体力、気力は言うまでもなく、一番重要です。大きな段差で手を上の段にかけたとき、変なものを触ってしまった。獣のう〇こだ。たぶん猿。臭い!そのグローブをしばらく葉っぱや地面にすりつけて臭いを消そうと試みるが、いっこうにとれない。これでテンションを落としてはだめだ、と思いつつ、「くせ~」、と心の中で叫びながら、将悟さんに続く。やはり気力は大事。そんなことをしている間に、周りの様相が変わってくる。緑がなくなり、岩だらけの中にいる私たち。山頂が近づいてきた証拠か。どんどん穂先が近づいてくる。

かっこいい稜線!そして穂先!
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ひたすら岩

楽しい。けど体力はめちゃくちゃ使っていると感じていた。独標は巻いてしまった。最後のチムニーを前に将悟さんに家族から電話が。たぶん娘さんと話をしていたと思うんだけど、その会話を隣で聞いていたらなぜか涙が出てくる。うまく説明できないけど、自分は今、家族と離れて、全力で登っている。自分の力を全力でぶつけている。これが僕のやりたいことで、子供たちにも見てもらいたいことなんだなぁ、とそんな気持ちがこみあげてくる。家族のことを強く思い出してしまった。

 ROCK! 
ただひたすらに
©fujimaki sho
ROCK!
あと少し
©fujimaki sho
ROCK!
山頂手前、最後のチムニー直登
かっこいい岩だなぁ
©fujimaki sho

14時50分、無事に槍ヶ岳山頂に到着。藤巻君と友人のたいぞうさんが待っていてくれた。山頂にいる何人かのお客さんにも祝福してもらった。記念撮影をしてすぐ下山。ここまでほとんど人に会わなかったので、多く感じる。

イエ~イ!
翔君、たいぞうさん、ありがとう!
しかしみんな黒いな

前日も立ち寄った槍ヶ岳山荘のCCレモンで乾杯!少し休んで、前日睡魔にやられた西鎌尾根をひたすら戻り、前日カルビ丼を食べた双六小屋でおやつを食べ、三俣山荘テント場へ。無事に夜ごはんにありつけました。雪渓の水が冷たかったデス。。

プシュっ!
膝、ニューハレでがっちりサポート
©fujimaki sho
「では、また明後日、唐松のあたりで!」
西鎌尾根へ
©fujimaki sho

この日もパンチが効いたなかなかの一日でしたな~。ありがとうございました!

4日目も終わろうとしています。
正面には5日目の出だしの鷲羽岳。好きな山です。
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15時間7分 37.88㎞ 3031mD+

残すところあと二日しかない!もうさみしくなってきている私。

明日も早そうだ。

yamamoto