第4章 限界っす

三日目。辺りはまだ暗い3時40分に歩き出した。当初の予定であれば雲の平のキャンプ場にいるはずだが‥‥。私たち二人の行動計画のミスにより、時間が大幅に遅れている。だって休憩時間を入れずに計画しているのですから。これは僕が昨年の甲斐国ロングトレイルでやったことと同じだ。そのとき山の中で、将悟さんに「だめだよ~けんぼう!これじゃあ厳しいよ~!」だめだしされました。でもすぐに将悟さんより一言。「でもおれも同じようなことするけど!」って言われたことを思い出した。まさか今回!!!それ!!次はお互い間違えないと思う‥‥、たぶん。。。。スタートしてからしばらくは整備された木段歩き。北ノ股山あたりで日の出を迎えた。

3日目の夜明けですね
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お花畑楽園!

黒部五郎が見えてきた。将悟さんと二人で、あそこの山の上までどのくらいの時間で行けるか、というゲームを始めた。見た目でかかる時間を当てる、というゲーム。でも二人が言う時間が似たようなものでそこまでゲームっぽくはならなかったが、楽しかった。黒部五郎の下のカールは、すごく好きな場所で、まるでヨーロッパの山の中。この辺りは何度も訪れているが、何度来てもいいところ。

いいとこですよね~黒部五郎カール

いよいよ双六岳に近づくと、ブ~ンとドローンの音が。これは藤巻君だ、と二人でテンションが上がる。双六岳も好きな山の一つで、そこからの槍ヶ岳を正面に平らなトレイルの撮影スポットで撮影会。いつもいいところで構えていますよ彼らは。迫力ある槍と共にいい写真が取れました。

©fujimaki sho

双六小屋に到着すると、軽食の看板が目に飛び込む。どうしてもカルビ丼が食べたくなる。将悟さんはうどんを食べたいようだった。僕は大盛カルビ丼。将悟さんに「よく食えるな~」と笑われたが、とてもおいしく食べれた。将悟さんはほぼ、飴とお菓子とジュースで行動している。これはこれで超人的。

ホットミルクが500円に対して、カルビ丼1000円はお得じゃないですか!?
双六小屋にてエネルギー補給
山菜うどん VS 大盛カルビ丼
©fujimaki sho

さて、槍に向かうぞ~!西鎌尾根、左手には岩肌が露出した山々を観ながら興奮気味にスタートしたが、、、小屋を出発して20分ほどでお互いに眠さが来た。将悟さんが先に5分ほど仮眠。そして僕がその後5分ほど仮眠。すっきり、復活した。標高の高いところでは無理をしないほうがいいですね。槍ヶ岳山荘を越えてこれから3日目の核心部分に向かっていく。しかし時間は押している。目的の一つ、ジャンダルムが待ち構えている。行く気は満々。南岳を通り過ぎると大キレットと言われる岩場が徐々に険しさを増してくる。転んだら大けがにつながる岩場は進むのに慎重になるので時間がかかります。

大キレットのはじまりです
なかなか進まない道

ここはとにかく岩岩岩。北穂高岳への登り。マーキングや鎖はあるものの、かなり急で、全身をフルに使うようにして登る。息が切れる。かなり疲れている。この感覚はレースでは味わったことのない全身疲労だった。落ちたらもちろんだめだし、集中力も必要だ。山頂に着いたころには17:00をまわっていたと思う。ジャンダルムが遠いなぁ。疲労はしていたのだけど登頂して驚いた事は、山頂に立派な山荘があるということ。そして、将悟さんの知名度が半端ないということ。ここに着くまでにも感じていたが、行く先々で、「望月さん、写真撮って!」という風に言われていた。僕も地元の鳳凰や八ヶ岳ではたまにそんな風に言われて、写真をお願いされて、一緒にいる仲間にシャッターを押してもらうことがあるが、今回の旅は、完全に僕がカメラマンだった。(笑)望月将悟の専属カメラマンの山本です。よろしくお願いします!これもとても面白くて僕は新鮮だったが、優しい将悟さんはいつも僕のことも紹介してくれた。

ちょっと疲れたかなぁ!楽しかったんですが!

話は戻るが、ここで僕がこの旅で初めて真剣に将悟さんにお願いをした。

「ここで降りませんか?」

この疲労した体でこの先さらに厳しくなる岩場を真っ暗の中通過するのは、僕にとってリスクが大きすぎるし、目的地の小梨平に何時に到着できるか全く予想がつかない。本来、焼岳まで行き、小梨平へ向かうプランだったが、それは槍ヶ岳を通過したあたりで無理だと判断していた。北穂高まででこんなに体力を奪われるとは正直思っていなかった。恐るべし穂高。ジャンダルムに行きたい気持ちはあるけど、今回は厳しいかなと感じてしまった。将悟さんももちろん、受け入れてくれて、北穂高から涸沢に下山することに。ブーメランは急カーブして折り返し地点へ向かうことになった。しかしカーブを決めてからの道程も長かった。涸沢に着き、その後横尾、上高地へと向かうが、とにかく長い。

涸沢 テントはちらほら
ここからが長いんだな・・・(^^;

時間は23時になり小梨平へ無事到着。最後の10㎞の林道は将悟さんが睡魔にやられ、歩きながら僕の肩に寄りかかって寝ていた。ペアの威力を発揮!小梨平では2回目のサポートで、ニューハレの大型新人の近江君とカメラマンの努龍君が待ってくれていた。近江君はテキパキ動き、テントの中にはすでにマットと寝袋を敷いてくれてあり、寝るだけの状態。何も言うことなしです。エルクからいただいたレトルトのナポリタンを一気に食べる。将悟さんは、温かいものを飲み、すぐ休む準備をしていた。

二人に会えたことで、下界に降りてきた感があり、少し気持ちにゆとりができリラックスして休むことができた。

小梨平、深夜12時、黙々と食べる飲む
©takebe doryu

それにしてもナポリタンがとてもおいしく満腹でした。

明日からはまた槍に登り、白馬に戻るど~!おやすみなさい。

移動距離51.99㎞ 3046mD+ 19時間18分