第3章 初めての北方稜線に大興奮
二日目《阿曾原温泉~北方稜線~剱岳~立山~五色が原~薬師岳~薬師峠》
午前0:30起床。(やっぱり早かった(笑))5時間も睡眠をとるとは予想していなかった。前日温泉に入ったおかげで僕たちの体調は万全だ。山奥だが、標高800mは深夜でも寒くなくちょうどいい感じ。静かに小屋をあとにする。しばらく関西電力の施設の中を通る。こんな山奥にこの施設、不思議な感覚になるが、専用鉄道やトンネルなどが走っていて黒部の開発のすごさを感じた。
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宿舎の出口付近で仙人湯方面を一時見失い、右往左往。すぐに復旧し雲切谷と仙人谷に挟まれた雲切新道へ。ここからが急坂で、真っ暗闇の中、黙々と仙人湯手前の小ピーク(1629m)までひたすら登る。意外とあっという間に仙人湯に着いたと感じたのは、前日の餓鬼山で鍛えられたせいかもしれない。ありがとう餓鬼山!なだらかな雪渓をトラバースして仙人温泉小屋へ。ここは休業中。この先の仙人谷は大きな雪渓で、この辺りで後立山の山々がうっすらと明るくなり始めた。途中、沢が分かれていたが、真っ暗なので方向をしっかりと確認しながら、そして、雪渓の出口を見失わないようにさらに慎重に歩いた。
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完全に明るくなり、ほどなくすると仙人池ヒュッテに到着した。けっこうお客さんいました。記念撮影をしてすぐ先にある池の平小屋へ。
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裏劔と仙人池と熊と猿
本当は一日目ここまで来たかったのだが、ちょっと厳しかったようだ…。小屋ではスタッフの皆さんと記念撮影をしたり、話をしながら楽しいひと時を過ごさせてもらった。僕たちの装備について小屋の方に伝えたり、この先の剱岳までの情報などを聞いて、本日のメインとなる北方稜線ルートへと向かった。バリエーションルートのため軽い気持ちで行ける場所ではないので、送り出すほうも、送られる側も、安心できる意思疎通が大切ですね。
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スイカご馳走様です!
小屋からのモリブデン旧鉱山道はちょっといやらしい角度のついたスラブを通過する場所があり、雨が降ると嫌な感じかもしれない。雨でなかったのですんなり通過して、いよいよ小窓雪渓へ。この雪渓は日本に存在する貴重な氷河の一つである。
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そんな貴重な場所にいることをうれしく思い一歩一歩その喜びを踏みしめる。しかし楽しい時間はあっという間に終わる。いよいよ緊張の稜線。しかしここは事前学習の通り、焦らず巻きながら進む。おじさんを一人追い越し、それからガイドさんとその女性のお客さん二人も追い越した。こんなところをガイドするのは大変だと思いながら追い越すと、その直後に後ろから、ガイドさんの厳しい声が聞こえた。「歩かないと先に進めないですよ。時間のことも考えて」確かにここは暗いときは歩きたくないな。途中雪渓を二つ越える。一つ目は雪解けが進んでいて、上部を巻きながら通過した。二つ目は、よくインターネットに画像が出ている6~7メートル程の結構急な雪渓のトラバースだが、日射によりシャーベットになっていて、ピッケルで足場を作りながら無難に通過した。その先も巻きながら進む。いよいよ直登が来た。ルートを間違えて、浮石を一つ落としてしまった。こういうところが難しいのかもしれない。程なくすると小窓の王のコルに到着。有名な「池ノ谷ガリー」が姿を現す。
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歩きづらくて楽しいです♪
上のコル(池ノ谷乗越)まで直登します
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距離的には大したことないけど、コルに行くまでには発射台と呼ばれる大岩の下のザレた急坂を下る。ここがまた落石ポイントで、二人で声をかけたり、安全地帯を確認しながら進む。三の窓というコルにあっという間に到着。振り返ると、こんな急なところ降りてきたのか、と。見た目と実際の斜度はずいぶん違うと感じた。噂の池ノ谷ガリーに突入。噂通り、ザレていて進まない。どこを通れば歩きやすいか二人でいろいろ考えたが、大した答えはないまま乗り切った。
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その終点の池ノ谷乗越ではこの先の急登に向けて一休み。どこからでもすごい景色で興奮状態だった。この先、岩場を登ることになるが、多少高度感はあるものの、集中して気持ちよく池ノ谷の頭へ。
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ここからは長次郎谷側をトラバースして本峰の岩稜に向かっていく。急峻なアップダウンを繰り返しながら、最後の登りになった。無事登頂。実は人生初めての剱岳である。本当に面白いコースだった。ルートサインや鎖ロープはなくルート間違えると危険がすぐそこにあるルートだけど、事前の調査をかなりしっかりやったのでほぼイメージ通りで進むことができた。まだ二日目で疲労も少なかったので、相当楽しく登頂することができた。そしてやっぱり山頂は気持ちいい。しかも景色最高!努龍君が撮影のために登ってきてくれていた。この方もカメラマンなのに僕たちの食料など担ぎ上げてくれるサポートカメラマン。すごい人です。
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劔岳山頂にて
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雑誌Tarzanのカットにもなった一枚です
©takebe doryu
剱山荘には彼が背負ってきてくれた僕たちの荷物がデポされている。山頂から剱山荘までは少し混雑していた。人気のある山だということを実感しながら安全に下った。カニのヨコバイには鎖がつけられていた。なぜかこの鎖を見るだけで安心します。無事に剱山荘に到着して装備を受け取る。代わりに、ピッケルとアイゼンを努龍君に渡す。ピッケル2本とアイゼン2足を重い機材と共に担ぎ下ろすカメラマン。感謝しかありません。本当にありがとうございます。
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鎖はあっても気は抜けません
©takebe doryu
ここでは長めに休んだ。将悟さんがカップのうどんを食べている。僕もカップうどんを食べた。めちゃくちゃうまい。僕は基本おにぎりなので山小屋で食べるのは人生初なんです。努龍君に運んでもらった食料などをザックに詰め、サムズのプロテインを飲み干した。将悟さんにも飲んでもらおうと渡したが、蓋がうまく締まっていなくて、全部こぼれる。大変申し訳ございません。もう一杯作り、飲んでもらった。しっかり補給して出発。
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山は食事を無限にうまくさせてくれる不思議なところ
©takebe doryu
ここからは立山エリアに突入する。立山の景色は素晴らしかった。滑りたいなぁなんて思いながら稜線上を南下する。雄山から一の越山荘までは非常に混雑していた。ここも観光地だった。いろいろと富士山に似ている。そこからはとてもすいていて、いやすきすぎていて、少し寂しいくらいだった。
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最高です!
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五色が原で調子に乗り、カップヌードルを食べた。うまい!元気100%。今日は薬師岳を越えよう、と話をしていざ出発。しかしこの先には、僕たちあまり得意でないスゴ乗越の頭が待ち構えている。足元は悪く、似たような景色が続く。スゴ乗越小屋を過ぎてから暗くなりはじめ、北薬師岳に登っている最中には少し睡魔が襲ってきた。しかも霧が出て風もある。薬師岳は大きくて、北薬師岳と薬師岳の間は早歩きでも1時間もかかる。標高が下がり、強風地帯を抜け出して幕営地に到着!すぐにお湯を沸かしてもらい例によって僕はノンカフェインのカフェオレをいただき体を温めた。みそ汁もいただいた。しみる。将悟さんからもらってばかりだ。次の日は午前3時に起きようということになった。休憩については最低でも3時間以上は仮眠しようと事前から決めていたことだ。
写真がほぼありません。
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あっという間で長い一日が終わった。
移動距離45.7㎞ 5231mD+ 21時間59分
つづく・・・・
yamamoto
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