後半部分 夜から朝、そしてゴールへ

※夜中部分は写真がないため心のつぶやきをお送りいたします。《 》若干甲州弁混じっています。

2度目のsoulcemのエイドを一応元気よく後にしました。みなさんもそうだと思いますが、エイドの直後は元気です。この先にはこのレースの核心部分モンカルムの山々が待っています。

《楽しみだなぁ、一気に行っちもうよ!》

ここからは、ペーサーと一緒に進むことが可能です。一気に1400mの標高差を駆け上がるわけですが、下見で一度歩いたんだけど、これがまた急なんです。

《ちっと急すぎるら・・・》

この急坂は、2015年フランス、ベルドンヌで開催された「レシャップベル」での夜中の急坂以来です。まぁ嫌いじゃあないんですけどね。ゆっくり登れるので。でもこの時は深夜0時に差し掛かるところで、ここでここ数年苦手意識のある「あいつ」がやってきてしまったのです。

《眠くなっちょばいいなぁ・・・》

最初は大したことないなと思っていたのですが、高度が上がるにつれて次第に、あいつが僕を負かそうとするんです。

でも僕は、絶対にあいつには負けない、と目をつむりながらも大きなカールの中を進む。ふと気が付くと、あれ、コースの旗がない。あたりを見回すと、だいぶ向こう側に。いかんいかん。負けているではないか。2800m付近まで来ると、さらに傾斜がきつくなり、気温も下がってきました。「あいつ」がさらに強烈に襲ってくる。

《やっぱり手強い・・・うおぉ~》

目をつむり7秒数える。なぜ7秒か。以前、アンドラを初めて走った時、夜中2時110㎞地点ですごく眠くなって、その時、ストックにおでこをつけて7秒カウントして目をつむったのです。その時はすっきりしてその後、快調に飛ばすことができました。そんな成功体験から、まず停滞して眠るときは7秒と決めてるわけです。そしてそれでもだめならバタンと倒れて休みます。稜線まであと少しなんだけどそこからがきつい。ここでも休みたかったけど傾斜と寒さが休むのに全く適していなくて、、、、耐えながら進みます。汗。やむを得ず自動的にペースダウンです。そしてようやく3000mを越えてモンカルム山群の稜線にたどり着くことができました。風が強く気温も下がり、NORRONA bitihorn dri1 Jacket (ノローナ、ビティホーンドライワン)レインウエアを着用しました。これもお気に入りの一枚で、風雨は問題なくしのいでくれるんですが、特徴は脇の部分のベンチレーションがとても大きいことです。発汗時の抜けが素晴らしいことと、レインウエアをバックパックの上から羽織った時に、ベンチレーションの開口部から腰のあたりにあるジェルなどの補給食がストレスなく取り出せるということです。とても使いやすい一枚です。

《次はどこへ行くのかな?》

ここからは、モンカルムの四つのピークをピストンします。それぞれのピークには穴あきパンチが置いてあり、自分のゼッケンの指定された場所に穴をあけて戻ってくるというシステム。

1つ目Montcalm3077mクリア。ピークには誰もいない・・・確か誰もいなかったと思います。いたらすみません。

《誰もいんだけ!》

パチッとゼッケンに穴を開け、早々に折り返す。夜中なので景色見えません。

2つ目Pique d’ Estat3143mクリア。途中にスタッフいたけどピークは相変わらず、シ~ン。

3つ目、Verdaguer3129m。ここはあまり記憶がありません。足場が悪かったような気がします。

4つ目、Port de Sullo3072m。ここはやばかった。過去のレースの中で最も登るのに大変だった山だと思います。ポールを使っていたけど、畳んでウルトラスパイアザイゴス4.0のポールキャリアに括り付け、3点支持で登る感じ。ザイゴスの下部にはポールを折りたたみ、ササっとしまえるシンプルなキャリアがついています。ポールを畳む時間を除けば、わずかな時間でザイゴスにしまうことができます。

とにかくいち早くポールをしまいたかったんです。

《ほぼクライミングだ・・》

しかも落石もあった。少し上のほうからガラガラ・・・・まもなく隣のラインをストーン!と猛スピードで落ちていった。見たけど頭くらいの大きさの石だったような気がします。

《あぶね~!!やべ~!》

深夜2時、集中力が高まります。フィックスロープも使いながら、山頂に着くと、スタッフが2名。気を付けてください、という風に警告をしていました。

《ここはさすがにスタッフがいたな・・ほっ。でも同じところを下るっつうこんだよね・・・》

下りのほうが時間がかかりました。この4か所では前を行く選手や後ろから来る選手とすれ違うことがあります。お互いにタッチをしたり健闘をたたえ合い進みます。これでモンカルムの4つのピストンが終わります。あとはコルを一つ越えて今度は標高差1800mのダウンヒルです。

《ながい!》

そしていよいよ夜が明けて舘さんと Artigues のエイドで久々の再会です。標高は1200mほど。ここがサポートしてもらえる最後のエイドです。次会えるのはゴールになります。疲労しきっていて、あまり記憶がありません。すみません。そしてここからは最後の難所、2676mのPique Rouge Bassiesまでの一気登りです。標高差約1500m。

《最後か・・・》

ここでなんと、カメラの藤巻翔くんが、ちょうど朝陽のタイミングだったので、次の登り行けるところまで行って撮ります!という風に言ってくれて、エイドを一緒に出発!しかも機材をすべて入れて。てくてく登る。まるでペーサー。僕はけっこう消耗していたけど、正直、機材で重い翔君よりは速く登れると思っていました。しかし1時間たっても翔君は余裕そう。むしろ僕を追い越し、いいところで構えている。そして僕が追い越し、また彼が先に行き構える。この繰り返しでなんと、2時間半。ピークに着いてしまったではありませんか。このカメラマン、飯もよく食べるが、体力も半端ない。刺激をいただきました。負けてられね~。

その時の2時間半の藤巻フォトギャラリーの一部がこちら。

©sho fujimaki
かなり大きな岩の斜面。ここをほぼ直登です。
©sho fujimaki
ハニースティンガージェルを20分に1パック摂取しながら進む。つかの間の平ら。
©sho fujimaki
自然の階段。太ももパンパン!
©sho fujimaki
「翔くん、ちょっと休憩!」と休みを申請中の画
©sho fujimaki
終盤、左上のとんがりがピーク!朝陽がまぶしいぜい
©sho fujimaki
あそこが、ピークか!あと少しに迫るの画
©sho fujimaki
エイドはずっと下の谷の中。いよいよ稜線に出たよ~。なかなかいい登りでした。
©sho fujimaki
お気に入りの一枚。ピレネーの険しさと孤独を表現した一枚。だけど心のつぶやきは、、、
《しょうくんに、負けたか・・・(笑)》
©sho fujimaki
2676mのPique Rouge Bassiesに到着!
©sho fujimaki
ピーク付近にミニエイド出現。朝一のりんごジュースは最高にうまかったです。

脚は追い込まれたけど景色もよくていいところでした。

©sho fujimaki
ここまでありがとう!次はゴールで!

素早く補給し、すぐ下山です。

ここからは標高差1000mのダウンヒル。といっても岩が大きくて多くて、まともに走ることができない状況でした。そしてマーキングはしっかりしているのだけど、見失いやすい。でももう後半なのでこういうのに慣れました。焦らず一歩一歩確実に踏んで、高度を下げていきます。そうすると、きれいな池が出てきました。エイドです。

ここはBassies小屋。何もなければ数日間滞在したいくらいきれいな場所です。ここで最後の補給をしてゴール目指して出発!ちょこっと登って、あとはスキー場のダウンヒル。Auzat(オザ)の町まで一気に1300m下ります。しかもここは今までにない、平らなスキー場のゲレンデ。かなり飛ばしました。ここまでほとんど走れなかった分を、一気に飛ばして、全力で飛ばしてAuzatの街へ。街に降りたと思ったら、すぐにメイン会場へ。そうだオザは狭いんだ。ゲートが見えてきました。ついにゴールです。

《無事にたどり着けて、よかった~》

さて、みんな待っている。早く舘さんや翔君や、パトリック、そしてナウエルに会いたい。最後の直線に入りました。とりあえず、手を広げてゴォール!まず舘さんとハイタッチを交わしたかったので、舘さんどこかなぁ、と探す。

あれ?

いない。

たちさん、しょうくん。

いない。

まさか、僕のほうが早く着いてしまった?今までこんなことはなかったけど、そういうことかもしれない。1分ほどして、興奮冷めやらぬうちに二人が向こうから走ってやってきた!

「いやぁ、間に合わなかった!」焦りながら。僕は握手をして「ありがとう」と。

どうやら、翔君は僕と最後別れた2676mのピークからまた同じ道をエイドまで下ったのだけど、登り以上に下りのほうが難しく、時間がかかったらしい。確かに上部は岩場、下部は踏み抜きそうな足元が全く見えない草がたくさんあったのを思い出しました。とにかく全員無事にゴールで会うことができて、何も言うことないくらい最高でした。とても刺激的でワクワクする28時間ちょっと。感謝の気持ちでいっぱいです。

©sho fujimaki
ゴォォォォル!(テイク2)(笑)
©sho fujimaki
2回目のナウエルお迎え。彼も役者でした。(笑)
©sho fujimaki
2回目(笑)
©sho fujimaki
今回も黒い上着のパトリック(左)と通訳のおじちゃん。
©sho fujimaki
同じ宿で仲良くなった、タイミングサービスのドミニク夫妻。近くに娘さんもいるはずだが。そしてパトリック!ノリノリでテーブルにもノリノリです。会場盛り上げています。レース後のまったりなこの時間がたまりませんね~
©sho fujimaki
28時間、共に戦ってくれた舘さん、ありがとう!僕はお酒飲めないので炭酸で乾杯。舘さんがエイドにいるから、早くそこに行きたいと思えます。

表彰式は割と早いタイミングで行われました。多くのレースでは最終ランナーのころですが、ピカピカは他のカテゴリーに合わせて行います。ですので、男子はそろっていましたが、女子は1位の選手しかゴールしていない状況で、表彰式の最中に2位の選手が入ってきて、そのままだだーっと表彰台へ、ということもありました。でも最高でしょうね。長い旅を終えて、すぐに最高のご褒美をもらえるなんて。これまたいいもの見させてもらいました。

©sho fujimaki
僕は総合5位でした。最高のご褒美。
©sho fujimaki
会場はふるまいランチでにぎわっています。
©sho fujimaki
同じ宿舎のハイキングツアーのオネエサマたちと。宿に戻るとすぐに祝福してもらいました 。

忘れられない経験をたくさんすることができ、感謝の気持ちでいっぱいです。

夜になり、翌日に控えた帰国の準備を始めました。次なるゴールは家族と無事にディズニーランドに行くことです。

あっ、帰国前にもう一つ大事なことが・・・・

そうです。1979コンビの福岡の別府君です。彼のゴールを祝福しないと帰れません。

HPで位置を確認しながら、ゴールへ再び足を運びました。あまり時間は覚えていませんが暗かったので23時くらいだったかと思います。ナウエルもいました。別府君を待つ間、レースの話や、トレーニングのことなどゆっくりいろいろ話ができとてもいい時間でした。

そうこうしている間に、ついにやってきました!僕のゴールした時より観客がいたかもしれません。無事ゴール!

©sho fujimaki
夜中ですが、元気よく上裸で入ってきました!観客が多かったです。エンターテイナー。

MCたちは、ペーサーの野間さんがいなかったことがとても心配だったのか、別府君がゴールすると、まず「ヨーコはどうしてる?」ということをインタビューされていました。やはり野間さんは人気者です。野間さんは体調を崩して途中でお休みになられているとのことでした。そして別府君は、、、この男、知る人ぞ知る、別府君と言ったら、カレー、ドボン。この二つでは国内では、いやもしかしたら世界でも上位にランクインされると思うのですが、ピレネーでもしっかり泳いでいました。きれいな池がたくさんありましたからね~。どこでもなんでもスタイルを貫く男です。脱帽。ピレネーの山を一緒に走った時間は一生忘れないです。ありがとう!

©sho fujimaki
これからもまだまだ俺たちはがんばりましょう!

このレースこそ、完走すれば100点満点だと思います。トレーニング、装備等、準備をしっかりしないと完走が危ぶまれますがゴールした時の達成感はかなりのものですのでぜひ挑戦してみてください。ペーサーがつけられればさらに楽しめるかもしれませんね。

僕もまた行きたいレースの一つです。ナウエル、いつかまた行くよ!

以上、ピカピカ でした。

帰国翌日、足を引きずりながらも夢の国で第2ラウンドを楽しみました!

https://www.marathon-montcalm.com/fr

yamamoto