Photography [Kyoto]: Hiroya Nakata

プロフィール

 大阪出身。中学のときに経験した山村留学をきっかけに山に惹かれ、現在、白馬をベースに活動するプロスキーバム。雪が溶ければ静岡から北海道までノマドスタイルで農業とスキーの妄想に従事。滑りの信条は、山の頂からボトムまでニュースクールなラインを描くこと。冬の毎日は雪と斜面との追いかけっこ。滑走の質と量、両方を求めながら日々を追いかけて活動している。よーは、仕事だろうが遊びだろうが撮影だろうが、滑りたくて毎日を滑っている。

ウエアのはなし

 むかし、秋に羅臼でシャケバイのバイトをしている時、アラスカ帰りの友人鮭田マスオくんが言っていた。「きみは雪の色を知ってるかい?雪は白くないんだよ」最初は何を言っているのか、よくわからなかった。雪は白いと思っていたからだ。

秋が過ぎ冬が来たとき、山に戻りあらためて雪を見つめてみた。なるほど、雪は白くなかった。雪はつねにその色を変えていた。晩秋の初雪、1月の深雪、2月のアイシー、春の艶やかなコーンスノー、朝日の焼けた赤、夕日のとけたオレンジ、時間や季節により銀色や青色、黄金に見えるときもあった。

目からウロコがぽろりぽろり。

数年後、ノローナ白いウエアを着て雪面に立ったとき、僕の中ではっきりと雪は白ではなくなった。オフホワイトのウエアカラーは雪の色を浮かび上がらせたからだ。雪の色が知りたくて、このノローナの白ウエアを選びました。

のちにマスオくんに「わかったよ。雪は白くなかったよ」と報告しにいくと、「あれ、そんな話したっけ。なんだか覚えてないよ。ゴホッゴホッ。」と咳き込みながら、話を煙に巻いてマスオくんは鮭とばになっていった。

今でも、朝焼けに染まる雪山のサーモンピンクな斜面を見ると、ベルトコンベアで運ばれていくマスオくんの背中を思い出す。ありがとう、マスオくん。鮭とばって、お酒に合うよね。

*シャケバイ=毎秋、北海道道東で求人がある鮭加工の短期仕事。季節労働の定番のひとつ。

雪の色はこの写真でチェックしてほしい。

roldal Gore-Tex Jacket&Pants

板のはなし

 これまた、サーモンピンクなグラフィックの板は4frnt skiEHP。カナダディアンライダーエリックホーレイフソンのシグネーチャーモデル。ロングノーズ&フラットキャンバーは浮力だけでなく走りも求めている形状。当て込みやエアターンにジャンプなど、ラインを縦に滑りながら横に動ける名機。山の地形を滑ることに目覚めはじめた頃に出会えた、思い出の一台。今では7シーズン前くらいのモデルになり、操作感はオートマ感よりマニュアル感が強いが、そのくせのある乗り味にファンも多かった。シグネーチャーモデルを乗りこなすには、作ったライダーの滑りスタイルを取り入れるのが、わかりやすい。自分の滑りのスタイルと合わさることで、また新しい滑りが出来るかもしれない。滑りを通して板の製作者とコンタクトを取れた気がして、ちょっと楽しい。ニヤついた顔はバラクラバで隠しておこう。

隣の黒と黄色の板がKye110。こちらは次世代のシグネーチャーモデル。形状はキャンバーロッカーで、荒れた雪面にも強いモデル。EHPから56シーズンを経ていて、時代の進化を感じるモデル。よーは、強くて浮いて乗りやすい。ビンディングはセパレートのアルペンビンディング。最近はツアービンディングを使用してゲレンデを滑るのが嫌になってきた。ゲレンデではアルペンビンディングで素軽くかっ飛ばしたい。時代の進化と共にビジネスは移り変わる。ビジネスの関係で、この先ふたつのシグネーチャーモデルが製造されることは無くなったが、またどこかで次の名機が産声を上げているかもしれない。耳をたてながら、その声を探している。

ポールのはなし

 パンダポール。アメリカのユタ州スノーバードに滑りに行ったときに出会えた、竹製のハンドメイドポール。材料はリサイクル素材。竹は本場中国。自然を大事にする精神が入っている。

パンダポール使用者はパンダトライブと呼びあい、ひとつのマインドを共有した部族になる。パンダポールを使っている滑り手はだいたい、友達の友達。日本や世界の雪山で声をかけられ何回もハイタッチしたことがある。そんなところが気に入ってる。振り心地は少々力強いが、それもスタイルである。Tribe up! We are Panda tribe.

スケートと雪板のはなし

 雪山では縦ノリスキーだが、雪が溶けたらアスファルトの上では横向き。横ノリはけっして名乗れないけど、オーリーも出来ずただ坂道をターンしながら滑り降りる。それだけで爽快で楽しい。冬もオフのときはスノーボードや雪板をすこしやる。オンタイムは縦ノリで。オフのときは横ノリで。バランスの芯に乗り込んでいく感覚と懐の作り方は共通するけど、左右非対称な世界は奥深い。その入り口だけでも、自分にはパラダイスだ。どんな季節でも風を切りたい。

ヘルメットのはなし

 毎日着けているわけではないけど、なるべくかぶるようにしている。ヘルメットの傷の数が挑戦の数ではないけれど、カナダや白馬で共に滑り込んできた相棒である。「知らねぇよ」と冷たく読まずに、「しょうがねえな」のニュアンスで脱力系で読んでほしい。

ダウンのはなし

 カナダのインディアンのことわざで、

ダウンに空いた穴の数は、その男の焚き火の数を表し、ダクトテープでの補修の数はバムの年季を表す」

というらしい。

なるほど、焚き火の数は旅の回数を表して、穴の大きさはその火にどれだけ近づいたかを教えてくれる。火とは、旅の目的のこと。目的にたどりつくためには、やけどするくらいの熱量のなかに飛び込む度胸が時として必要だ。ダクトテープの数は、あきらめなかった回数。なんでも継続が答えかもしれない。

教訓じみてて、意味がありそうなことわざだが、インディアンの時代にダウンもダクトテープもないから、きっと迷信だろう。

けど、焚き火と旅で穴だらけになった、このダウンがお気に入り。今は薪割りと除雪に使用中。

 道具は使ってなんぼだと思います。プレイファーストの気持ちで、新品だとか中古だとか気にせず道具を手にとり、まずは遊びに出かけたい。

6月と12月にフルマークス大阪店にて、スライドトークショーを開催しています。関西の雪山好きの方、雪山の話を聞きに来てください。

シーズン中は白馬エリアにて、プライベートレッスンを開催中。初めてのロッカースキーから地形の攻略法まで、様々なニュースクールなライディングを伝えます。問い合わせは

kyotoskiski@gmail.com まで。

Welcome to nature. 北アルプスの山並みは、僕の心を魅了してやまない。

この話は80%ノンフィクションと20%ファンタジーで書かれています。イメージしながら読んでもらえると幸いです。

原田 響人

Kyoto Harada

 

★★★★★

次回は、サッカーに明け暮れた高校生活を終え、だらだらと過ごしていた日々に出会ったのがフリースタイルスキー。後ろ向きに滑ったり、飛んだり回ったり。今では当たり前の光景も、当時は「こんなスキーがあったんや!!」と衝撃を受け、カナダのウィスラーへ渡ったのが24歳。中西 太洋氏の登場です。