Walking for Ride

北欧のロングトレイルをバックパックひとつで1,500km以上歩いてきたふたり。横浜から豪雪地へ移り住んだのは10年前。いまふたりが熱狂するのは歩いて滑る山スキー。雪山の寒風から身を守るウェアは、北欧の荒野で出会ったノルウェーのノローナだ。

森山 伸也 (もりやま・しんや)
1978年生まれ。新潟県三条市出身。アウトドアライター。山菜、イワナ、きのこ、スキーと一年を通して山に通い、山に暮らす。スカンジナビアやアイスランドなど北欧のロングトレイルに精通し、著書に『北緯66.6° ラップランド歩き旅』(本の雑誌社)がある。

大森 千歳 (おおもり・ちとせ)
1983年生まれ。神奈川県横浜市出身。フォトグラファー。山中でテント泊をするためにひとりで山登りをはじめる。豪雪地の山村で畑を耕し、山菜を摘み、山の暮らしを楽しむ。10歳のボーダーコリーとの日課は裏山へスキー散歩。

-ふたりのおもな遠征-
2010年 北極圏トレイル(ノルド・カロット・レーデン)400km
2010年 キングス・トレイル(クングス・レーデン)450km
2013年 アイスランド縦断 500km
2014年 ノルウェー・ロフォテン諸島 200km




ひとがいなくて、どこにでもテントを張っていい北欧の荒野が好きで、これまで延べ120泊以上野宿しながら距離にして1,500km以上を歩いてきた。バックパックに生きるための衣食住を詰め、自由気ままに白夜の世界を幾日も歩く開放感たるや、何ものにも変えがたい時間だった。

そこではじめてノローナに出会った。まだ日本に輸入される前の話である。見慣れないロゴマークは、誰? ヴァイキング? 軍隊に提供している無骨なモデルもあれば、最新鋭のゴアテックスジャケット、極北用のグローブ、ザックまで。ワイルド気質のノルウェー国民の誰もが慕うアウトドア総合ブランドであった。



海外へ出かけられなくなったいま、一年でもっとも僕らが楽しみにしている遊びは山スキーだ。登山道に縛られることなく、どこを歩いてもいい自由さが、北欧の荒野に似ているからだろうか。そういえば、北欧でスキーといえば歩くスキー、クロスカントリースキーである。歩くことからはじまる山スキーが、僕らにはしっくりきた。だからというわけではないけれど、僕らは10年前に豪雪地帯にひっそりと構える山村へ移り住んだ。



スキーをはじめる前は、冬といえば次なるロングトレイル遠征への準備期間だった。しかし、いまや山スキーは生活に欠かせないものである。道具さえ揃えれば、お金をかけないで遊べるのもいい。登って滑るだけ。シンプルなのがいい。夏、渓流でイワナ釣りをしていても、ついついいい斜面を探してしまうスキーヤーの性が身についてしまった。



僕らが住む村は日本屈指の豪雪地にあり、一晩の積雪量が1mを越えることが年に何度かある。除雪車のエンジン音で目覚めると、家の周りの雪かきをして、おにぎりを握って、犬と一緒に玄関からスキーを履いて裏山に入る。ウサギの足跡を追いかけて、森を縫うように歩き、雪のいい斜面を滑って帰ってくる。そんな日課が半年ほど続く。山スキーのおかげで一年を通して最高の“ハイク”ライフを手に入れた。



歩いた分だけ、滑りは充実したものになる。スキーは歩きを裏切らない。そんなフェアでシンプルなところが山スキーの魅力である。だから、ハイクアップに重きをおいた山スキーを大事にしていきたい。

 





– Product Review –



雪山ハイクアップの肝は、汗をかかないこと。そのためにベースレイヤー、ミッドレイヤー、アウターの3本柱でレイヤリングを行う。最新素材を積極的に用いたり、斬新なディテールを取り入れたりとノローナの開発力は、世界トップクラスだろう。ここで紹介するウェアとギアは、ラッセルの森歩きからはじまる僕たちのスキースタイルにマッチしたものである。






アクレッシブにハイクアップできるジャケット
「lyngen Gore-Tex Jacket [M]」
「lyngen Gore-Tex Jacket [W]」

軽量で高い透湿性を持つ30デニールのGORE-TEX® Activeを使用したジャケット。肩、袖、襟、フードにはより耐久性の高いGORE-TEX® C-knitを用いている。脇下のベンチレーションを開ければスムーズな体温調節が可能で、袖は雪の侵入を防ぐハンドカフとマジックテープのダブルブフィット仕様。2つのチェストポケットの間には下からオープンするフロントベンチレーションを搭載。ビーコン操作もスムーズに行える。つまり、フロントパネルにはメインファスナーを含めて4つのファスナーがある。またフードはヘルメットの着用を考慮した大きめデザインで、襟は深く設計され、鼻まで高く覆うことができるので悪天候の際にも安心。

lyngen Gore-Tex Jacket [M]

lyngen Gore-Tex Jacket [W]





ロングツアーに適したタフな軽量シェルパンツ
「lyngen Gore-Tex Pro Pants [M]」
「lyngen Gore-Tex Pro Pants [W]」

スキーツアーやトレッキングに適した40デニールのシェルパンツ。GORE-TEX Pro®の耐久性に加え、防水性、軽量性、通気性を兼ね備えたバランスの良いウィンターシェルだ。腰には2つのベルクロで調整できるCustom-Fitのウエストシステムを採用。腰から膝にかけて大きく開く両サイドのベンチレーションを備え、ポケットはマチ付きで大容量だ。裾にはあらゆるブーツに対応するファスナーが付く。解放すればハイクアップを楽にしてくれる。

lyngen Gore-Tex Pro Pants [M]

lyngen Gore-Tex Pro Pants [W]






厳冬期から残雪期まで引っ張りだこのミッドレイヤー
「falketind Octa Jacket [M]」
「falketind Octa Jacket [W]」

リサイクルされたPERTEX®の表地と、中空の突起を8本持つ最新繊維(OCTA)を裏地に組み合わせたジャケット。軽量な素材からは考えられない高い保温力と、飽和した蒸気を適度に逃す通気性を兼ね、不思議ささえ感じてしまうほどに機能性が高い。裏地には最新インサレーションのOCTAがクモの巣のように張り巡らされていて、これが暖かく、ムレない秘密だ。サイドパネルと袖口にはストレッチ性に富んだwarm1 stretchを用いているので激しい動きにも追従し、ストレスを感じない。森山にとってシーズンを通して手放せないミッドレイヤーである。

falketind Octa Jacket [M]

falketind Octa Jacket [W]






中綿素材をフリースにしたミッドレイヤー
「falketind Alpha120 Zip Hood [M]」
「falketind Alpha120 Zip Hood [W]」

メイン素材にPolartec® Alpha® 120を採用し、通気性と保温性をバランスよく追求したアクティブなフリースフーディー。肩下から脇下、腕下に伸縮性の高いPolartec® Power Gridを使い、動きやすく熱がこもらないデザインに。袖には冷気の侵入を防ぐサムホールが付く。ふわっと暖かい空気をためながらも、ほどよく逃すPolartec® Alpha®はアクティブな中間着にもってこいの素材である。

falketind Alpha120 Zip Hood [M]

falketind Alpha120 Zip Hood [W]






ツーリングに特化したバックパック
「lyngen 45L Pack」
「lyngen 35L Pack」

形崩れしないパキッとした厚手の生地でパッキングしやすく、スノーツーリングに必要な機能が整っておりとにかく使いやすい。視認性の良い赤いファスナータブもグッド。付属のヘルメットホルダーネットを備え、ワンバックルでしっかりヘルメットを固定できる斬新なデザインだ。スキーを両サイドに装着したままメインコンパートメントにアクセスできる背面エントリー仕様。ウエストハーネスの両ポケットは大容量で、それぞれスキーやスプリットボードのシールを収納できる。数日間のツアーでもスムーズな山行を可能にしてくれるが、45Lと35Lの2種類があるので日程や装備の多さに応じて選びたい。

lyngen 45L Pack

lyngen 35L Pack






-Text by
Shinya Moriyama
@shinya_moriyama


-Photo by
Tomokazu Kuwano
instagram @kuwaphoto