日によっては雨と雪に立て続けに見舞われることもある。どのアプローチも長く、早いペースでクライミングをする必要があるので(好天に恵まれる時間は極めて短いのだ)、この地に赴く際には軽量で多目的なウェアが必要だ。また、険しい花崗岩があるので、身につけるものは丈夫でなければならない。私は厚手のウェアを2、3着持って行くよりも、薄いウェアを数枚準備するスタイルが好みだ。複雑で絶えず変化し続ける環境下では、このスタイルの方が使い勝手がいい。それに、やたらと余分な荷物が増えるのは堪え難い。以下は、私が最近パタゴニアを旅した際に着用、使用したもののリストだ。
svalbard flex1 pants は、あらゆる用途に着用できるパンツだ。ハイキング、アルペンスキー(愛用のrandonné のブーツともフィットする)、アイスクライミング、登山、そして、その他のアウトドア・アクティビティーに出かける際にも私はこのパンツを着用する。コシのある、ソフトシェルパンツで、耐久性に優れ、どんな天候にも適応してくれる。パタゴニアでのアプローチでは、このパンツの下にはウェアを装着することはなかった。登山では、このパンツの下にウールのウェアを着用するか、もしくは(あるいはこのウールのウェアとともに)薄手のフリース (trollveggen warm2 stretch tights)を身につける。このパンツの唯一残念なポイントは、アイゼンを使用したクライミングでは、裾が少々幅広であるということだ(とは言え、この裾の広さのおかげでいろいろな目的に使用できるのだが)。 ただ、私に関して言えば、愛用のブーツ、Scarpa Phantom Guide には付属のゲートルがあり、パンツをこのブーツにタックインすれば、タイトになり、動きやすく、アイゼンを使用しても快適である。また、超極薄の雨用のパンツ、fjørå dri1.も、私のバックパックにほぼ毎回収められている。豪雨や嵐に見舞われた際や、キャンプ中に寒さを感じた時にsvalbard flex1の上から重ねて着用している。
アプローチでは、 bitihorn aero60 を着ることが多い。これは私のお気に入りのひとつで、超軽量で通気性に富む、シンプルなウインドブレイカーだ。通常、私はこのウェアをジャケットの下に重ね着している。天候に恵まれた際は、このジャケット1枚だけでクライミングをすることもある。雨や吹雪に見舞われたり、天候が激しく変動する時には、この上からさらに bitihorn dri1 jacket を着用する。これも薄手の超軽量ジャケットで、防水性でもある。この2着のジャケットを着ると、安全で、2、3着のゴアテックスを重ね着しているような感覚になるが、これらのジャケットは他のヘビーデューティーなジャケットと比べると、耐久性が乏しく、裂け易いので、険しい花崗岩の割れ目などに挟まるとダメージを受ける可能性がある。falketind gore-tex は、超軽量のジャケットで、険しい行程が予想される時に、まず私が選択するジャケットである。
基本的に私は、ウールのウェアの上に、薄手のフリースジャケット、afalketind warm1 を重ね着している。パタゴニアでのほとんどのクライミングでは、これに加え、薄手のプリマロフトのジャケット、厚手のダウンジャケットの2種類の断熱素材でできたジャケットを用意した。 lyngen primaloft60 は、とてもコンパクトで軽量の断熱ウェアである。私はこのジャケットをシェルジャケットの上から、もしくは下に重ね着する。とても工夫に富んだウェアだ。寒い日のクライミングには結局このジャケットを着用することが多い。これを家に置き忘れることは絶対にありえない! 寒い時期のザイルを固定する岩場 、休憩時、キャンプ場や緊急時に備えて、私は厚手で着心地のいい、lyngen down750 も愛用している。この断熱ジャケットは、保温性にすぐれ、軽量で生地も厚くすばらしい出来映えだ。
私はこれまで何度も凍傷を経験しており、私の指は絶えず冷えている。これは、クライミングをする際の大きな課題である。いつもミトンを着けているべきだと思うが、難しいクライミングではミトンの着用は不可能である。パタゴニアでは、ほとんどの場合にやや厚めの手袋を着けていたが、lofoten Gore-tex glove は私の好みだ。これは、Norrøna の断熱素材でできた手袋でグリップも最高。これが長手袋でないのが残念なポイントだと思う(実は、この手袋の長いタイプのものをNorrønaと開発中だ)。短い手袋が好みの人もいるが、私は断然長い方が好きだ。バックアップとして、もう一組の手袋をバックパックに携帯している。バックパックの一番下にある narvik dri1 insulated mittens は非常用の手袋だ。
私は、パタゴニアで3つの異なるバックパックを使った。セロ・トレの麓にあった我々の「進化したベースキャンプ」まで重い荷物を運ぶには、 svalbard synkron 80L pack を背負った。ここからのクライミングでは、超軽量で、シンプルで使い心地のいい falketind 30L packが抜群の使い心地だった。フィッツロイでは、2日間で最小限必要なものしか携帯しなかったので、アプローチでもクライミングでも同じバックパックを使用した。 trollveggen 45L は、この目的に適ったバックパックだった。寝袋、スリーピングマット、小型のテントが収納できるスペースがある。麓では、このような寝具は残していけるので、できるだけバックパックの重量を軽くするようにしている。また、すばやく、動きがとりやすいように、バックプレート、アルミステーを取り出し、ヒップベルトと上部のカバーを外して、半分の重さである750g! にまで重量を減らしている。アプローチに最高のバックパックが、一瞬のうちにシンプルで軽量なくタイミングパックに変身するのは驚きだ!
旅から戻って、ダイアリーを見ると、ウェアおよびバックパックについて調整すべき事柄がたくさん記されている。我々は、机上でたくさんのクリエイティブワークを行っているが、このように実際に製品を使ってみることでのみ、あらゆる意味での本当の使い心地がわかるものである。ウェアやアクセサリーは、細かいディテールが本当に重要なのだ。そう、すべてはディテールにある! といってもいいだろう! 私は、自分の経験が、他の人に役立つことを願っている。ここ数年、私が山で凍えたり、ひどい気分を味わったことを他の人に追体験してもらいたくないのだ。ただ、確かにウェアやアクセサリーは山で重要だが、何よりも大事なことは、ユーザーである、あなた自身である。そう、すべてはあなた次第なのだ!
それでは、楽しいアウトドア・アクティビティーを!