Portrait: Christine Hargin

Norrønaに新しく加わったアンバサダー、クリスティーン・ハージンは、フリーライド・ワールドツアーの女性部門で優勝を果たした女性である。

青空にさんさんと太陽が輝いていた。それは、まるでスウェーデンの国旗のようだった。山岳は雄大で、険しく、降ったばかりの雪が積もっていた。クリスティーン・ハージンはこのような光景を愛してやまない。シャモニーで開催されているフリーライド・ワールドツアー(FWT)に参戦するために、クリスティーンはスウェーデンからやってきた。スターティングゲートの間に立ったハージンは、自分が選択したラインを記憶している。彼女はわくわくしていた。

山から滑ること、他の選手と競い合うこと、スピードを思いっきり出して滑ることを、ずっと心待ちにしていた。
ついに、その瞬間がやってきたのだ。

ハージンは2012年12月、Norrønaとアンバサダー契約をした。2012年のフリーライド・ワールドチャンピオンでも彼女は優勝することだろう。また、彼女はノルウェーの山岳とフィヨルドのツアーに参加することも楽しみにしている。
「Norrønaの仕事はとてもエキサイティングだわ。これからは、バックカントリースキー用のビンディングとクライミングスキンをつけなくちゃね。ツアーに出るのは初めてなの」。

アルパインスキーツアーもしたことはないんですか?
「ないわ」。
クライミングスキンも使ったことがないんですよね。
「待って、このこと記事に書くの?」。
ええ、でも本当なんですよね?
「たしか、1回試したことがあったかしら」。
つけたことないんでしょ?
「ないわ!」。

ハージンはおそらく、スキーで登山した経験がないのだ。彼女はこれまで、山から降りてくる競技に時間を割いていたのだから。ストックホルム出身の彼女のスキー経験は豊富で、いつでもスキーをしていた。彼女のスキー人生は、地元ストックホルムのスキークラブから始まった。オーレの高校に進学してもスキーを続け、その後、ジュニア・アルペン・スキーチームを結成し、高校卒業後は人生のすべてをスキーに捧げてきた。ストックホルムで学業に専念するため、2004年にスキーを中断するまで、彼女はヨーロピアン・カップやワールド・アルペン・スキー・カップにも参戦した。
「私はアート、カルチャー、そして経済学なんかの勉強を始めたの。ビジネス、マーケティングでは学位も取得していてね」。大学時代、自由に使える時間がたくさんあったので、彼女はフリーライディングを始めた。 「アルプスに行ったのね。それまでも何度もアルプスには行ったことがあったんだけど、スキー用のスロープを滑っていただけだった。アルプスでフリーライディングをするのは、まったく別の体験だった」と彼女は語る。かつてアルペンスキーヤーだった彼女は、フリーライディングがすっかり気に入ってしまった。パウダースノーと戯れ、山で遊ぶ自由な楽しさを感じていた。
「思い起こしてみると、スキーすることに、いつもある種の目標設定をしていたわ。アルペン競技に参戦していたときは、とてもハイレベルな目標を掲げていた。でもフリーライディングを始めたら、そんな気持ちは消え失せてしまった。すごく楽しい気分になってきたの」とハージン。

ハージンは、冬シーズンの間はベースとなる家を持たない。彼女は世界中を飛びまわり、雪の状態がいい場合はいつでも競技に参戦し、撮影し、そして、スキーをしている。
「いろいろなものがたくさん見られるから最高よ。でも、明日はどこで寝るのかしらって考えると、時にはしんどいけどね」。
ノマドスタイルの生活もそれほど気楽なものではないようだが、彼女はくよくよ考えるタイプではない。「何かが欠けているという見方をしないように努めているの。でもたしかに根なし草のような生活ね。いつでも移動ばかりで、ルーティーンになっていることもない。でも、だからといって、街で普通の生活をしたいかと言われれば、答えはノーよ。これが自分にとって、最高にクールでポジティブな生き方だと思ってるから、あえてこういうスタイルを選んでいるの。他の生き方はできそうもないし、他の人のライフスタイルを真似したくもないわ。自分の人生は自分で決めるものよ」。

ハージンが初めてフリーライディングの競技に参加したときの結果は惨憺たるものだった。「断崖から降りるときにバランスを失って、ぐるぐるまわっちゃって、駄目になっちゃったわ。最初に参戦した2~3の大会は駄目だったわね。でも、その後はうまくいくようになったの」とハージン。
彼女を取り巻く状況はよりエキサイティングになってきた。「経験豊富なスキーヤー達と知り合って、彼らと一緒に出かけるようになったの。で、私も前よりもたくさんスキーに行くようになったわ」とハージン。
その後、彼女は国際大会に出場してみるのもおもしろいのではないかと考え始めた。きっと楽しい経験になるだろうと。2~3年間、予選大会に参加した後、フリーライド・ワールドツアーで4位に入賞。いまでは、彼女はトップランクの選手として認知されている。彼女の目標は、たえず技術をレベルアップしていくことだ。「私はいつでもレベルアップして、クリエイティヴなスキーができるよう注力しているの。これまでもいくつかの大会では優勝しているけど、もっと多くの大会、いいえ、あらゆる大会で優勝したいとも思っているわ」とハージン。自分にとってのパーフェクトなスキースタイルを頭のなかでイメージすることが、彼女にはできている。「もちろん、イメージは完璧にできあがっているわ。スキーのスピードは速く、ジャンプは高く、そして見せ場もしっかりつくっている。あれこれ手を加えない、シンプルなスタイルが好みだから」と彼女は語る。

FWTの会場はいい雰囲気だった。とくに、友人のウィレ・リンドバーグとレーヌ・バーカードがスウェーデンの男子チームに参加していたことは彼女を喜ばせた。「レーヌは、去年も今年も、すごくサポートしてくれた。いいアドバイスをいっぱいしてくれたし、ともかく彼が一緒なのは心強いわ。それに今年は、ウィレも参戦しているのよ。彼はすごく仲のよい友人で、ずいぶんと一緒にスキーに出かけたわ。だから、今年はいつにも増して楽しいのよね。これは間違いのないことなんだけど、楽しんでやると、スキーもうまくいくのよ」とハージン。
彼女は、彼らから学ぶ事がたくさんあると思っている。「うん、彼らのことをライバル視しているとも言えるわね。別に自信をもっと高めようとして彼らと接しているわけではないわよ。でも、やるからにはもっとうまくなりたいし、刺激を受けながらスキーをしたい。パワー、テクニック、そしてジャンプのノウハウについてはとくに、彼らから学ぶことが多いわ」。ハージンの時間はほぼすべてスキーに費やされており、他のことにはそれほど関心を寄せていない。「私はそれほど上手なサーファーじゃないけど、休暇にはサーフィンに行くわ。他には、スケートボード、テニス、ヨガもやる。ストックホルムのスキーショップ、アルパインガレージでちょっとの時間だけれど働いてもいる」。インテリアやファッションにも興味があるが、自分が撮影した写真を編集するといったクリエイティヴなことも大好きだ。「なんでも撮影しちゃうのよね。被写体のほとんどが、これまで出かけた場所や友人たち、そしてスキーに関するものだけど」とハージン。

場面は再び競技場に戻る。クリスティーンは、まるで踊るように山を滑っている。集中力が最高に高まっているが、とても楽しそうに見える。それは間違いのないことだ。高いジャンプ、大胆なターン、速いスピード。山側の反対で望遠鏡を見ながら観戦している観客たちは感嘆の声を上げた。
「すばらしい!」。
クリスティーンは3回目のジャンプを決めると、しっかりと着地した。終着点までいい気分で進み、太陽が照りつける青空を見上げて微笑んだ。ライバルたちも次々にゴールしている。最後の選手がゴールに着くと、結果が電光掲示板に発表された。クリスティーン・ハージンが1位に輝いた。それは、満場一致の結果であった。

クリスティーンは山を滑るときはいつもlofotenシリーズを身につける。また、タウンからアウトドアまで、あらゆる環境で快適に着用できる/29シリーズや、個人的なお気に入りであるlyngen lightweight down750を着こなす彼女を見かけることもあるだろう。