Daisuke Sasaki

「もっとも自分が能力を発揮できると感じる自然の中で、多くの時間を過ごすことができ、これまで楽しんできた経験をゲストと共有できる。それが自分にとってのガイドの仕事」

Photo: Shin Otsuka

佐々木 大輔

Daisuke Sasaki

1977年、札幌市生まれ。国際山岳ガイド。ビッグマウンテンスキーヤーとしてグリーンランドやパタゴニアなど世界の山々にトラックを残し、2017年デナリ・カシンリッジ登攀後、南西壁を滑降。

-お気に入りのノローナ製品

「lofoten Gore-Tex Pro Pants」

10年近く基本的なデザインは変わらず、スキーシーズンの朝から晩まで履き続けている。タフさがあるのにスキーヤーに適した立体裁断でストレスもなく、ポケットの位置も体の一部のようになっていて、とにかく安心できるパンツ。


「lofoten hiloflex200 Hood」

バックカントリーでの行動時はゴアジャケットではなく、通気性と保温性のバランスの良いインサレーションジャケットのほうが着心地も柔らかく、汗も結露しにくいので着用時間が多くなる。どのウエアでもスキー用具でもそうだが、自分の選ぶポイントはストレスが少しでも少ないもの。常にアンテナを研ぎ澄ませていなくてはならない状況において、少しでもそのアンテナの邪魔をしないものを使用することが自分にとっては何よりも重要だ。


「svalbard cotton Jacket」

クラシカルなデザインと落ち着いたカラーリング。普段使いはもちろん、生地がコットン75%なので、山や海でのキャンプの焚き火の周りでも心置きなく使える汎用性の広さが魅力。

lofoten Gore-Tex Pro Jacket & Pantsのセットアップでシーズンの多くを過ごす。Photo: Yusuke Kunimi

-1年間のライフサイクル

1〜3月は北海道をメインに国内でのスキーガイディング。4月はヨーロッパなど海外でのスキーガイディング。5月のGWは海外をメインにスキーガイディングを行い、その後も5月一杯はスキーガイド。6月にはスキーシーズンの後片付けと、森の整備、薪作り。

Photo: Ayako Niki

7〜9月は家族との時間とガイドのバランスをとる日々。沢登りや岩登りのガイディングが多め。10月は秋の森の整備や薪つくり、講師業など。11月は薪作りと冬のガイディングの準備、冬の暮らしへの準備。12月にスキーシーズンイン、滑り込みやトレーニングとスキーガイディングを開始する。

シーズン中のトレーニングはホームマウンテンのテイネハイランド。 Photo: Key Sato


圧雪も非圧雪もバランスよく滑り込む。 Photo: Key Sato

-グリーンシーズンのベストメモリー

この状況のおかげで昨年の夏はガイド業を休止し、多くの時間を家族と過ごすことによって、人生の中でも最高の夏を過ごすことができたと感じている。全てのことがベストであったと思っているので、あえて挙げると家族との時間。

子どもたちのお気に入りの遊びは庭に設置した手作りのアスレチック。 Photo: Ayako Niki

-ライディング以外で熱中していること

裏山の森いじり。手の入っていなかった森の中に道を作り、その過程で倒した木々を割って薪にしたり、仲間と過ごせる空間を作ったり、どんぐりから育てたミズナラの苗を植えたりと、身近なフィールドで自然と人とのバランスをうまくとりながら、共に美しく暮らしていきたいと思うので。

Before


After

-ホームマウンテンのこと

なんといってもテイネハイランド。高校卒業後に三浦雄一郎&スノードルフィンズに修業に入り、その後のライディングパートナーであり、ライバルでもあった児玉毅に出会い、朝から晩までトレーニング(本人たちには楽しんでいただけでその意識はないが)に明け暮れ、その日々の積み重ねで世界の舞台に出ていくことが出来た。自分のスキースタイルを作り、鍛え上げてくれた最高の道場であり、故郷。

Photo: Key Sato

コンパクトにまとまった急斜面の多いレイアウトで、そのなかでも2本のコースが大きな魅力。北かべコースは急斜面のコブの所々に立ち木があり、一瞬も油断できない。女子大回転コースは適度な長さと斜度があるうえに一枚バーンではなく、最後までねじれ続ける斜面。そのおかげで、より柔軟で滑りの中で突発的な瞬間に対処する能力が鍛えられた。この二つのコースを限界スピードで交互に滑り続けるのが自分にとっての唯一のスキートレーニングだ。

Photo: Key Sato

-もっとも印象深いライディング

2002年4月、エビスフィルムス「icon2 HighLife」にも収められた、アラスカ・スクークン氷河での夕日の中での一本。前年の「Redbull Snowthrill of Alaska」で3位の成績を収め、おそらくスキーヤーとしては一番ノッていた時期の一本。

Photo: Yoshiro Higai

何年も通ったアラスカで初めて仲間たちと氷河にキャンプを設置し、自分たちだけの力で周りの山々にチャレンジした日々。夜9時近い夕日の時間に合わせてピークを目指し、最高のタイミングでのドロップイン。ピンク色に染まる大斜面に飛び込み、ボトム近くではほとんど直滑降に近いラインだったが、空気の抵抗のためにそれ以上のスピードが出ず、初めて限界スピードを感じることが出来た。

Photo: Yoshiro Higai


前が関口雅樹、左から辻井隆行、高久智基、佐々木大輔、永島秀之、和泉健太郎、山木匡浩の錚々たる顔ぶれ。 Photo: Yoshiro Higai

また、記憶に残る1本といえば、やはりデナリ大滑降と2003年のグリーンランドハンバーガー島での夕日の中での一本が挙げられる。雪質のこともあり、ライディング自体は完璧な満足は得られていないが、何度か死線ギリギリに追い詰められた上で完遂したものだ。

Photo: Takao Araiba


北米大陸最高峰デナリの難ルートとして知られるカシンリッジをスキーを背負って登攀し、世界で初めて南西壁スキー滑降に成功した。 Photo: Takao Araiba

-家庭と滑りの両立

その時の状況や気分によってどんどんと変化するが、結婚前に突き詰めるところまで詰めているので、今は家族に軸足を置くことができている。

Photo: Ayako Niki

-なぜ、ガイドを志したか

中学・高校とガイドのもとで山 (山登り・岩登り・沢登り・山スキー・アイスクライミング) を覚え、この世界が自分にとって一番面白かったから。

Photo: Ayako Niki


Photo: Ayako Niki

-10年後のあなたは

全くもってわからないが、家族と自然を中心に生きてゆきたいと思う。一つ決めている未来は6年後 (長女が高校生、次女が中学生、長男が小学4年) に家族でキリマンジャロ登山とサファリに行くこと。

Photo: Ayako Niki

Photo: Ayako Niki

-ガイドという仕事に就いて良かったこと

第一に一番好きな山や自然の中に仕事としていられること。第二に自分は山の中で一番能力を発揮できると感じることができるから。第三に自分が最も好きで楽しんできた経験を生かし、その感覚をゲストと共有することができるから。

Photo: Yusuke Kunimi


Photo: Yusuke Kunimi


-Text by

佐々木 大輔 / Daisuke Sasaki
@daisukesasaki1721


ガイド 盤渓 / Guide Bankei
https://guide-bankei.com




-Photo by

樋貝 吉郎 / Yoshiro Higai
@yoshirohigai
https://studiofishi.com


佐藤 圭 / Key Sato
instagram @keyphoto


大塚 伸 / Shin Otsuka
facebook @shin.otsuka


二木 亜矢子 / Ayako Niki
@247nikiimages
https://nikiimages.com


國見 祐介 / Yusuke Kunimi
instagram @yusuke_kunimi


新井場 隆雄 / Takao Araiba