The History of Power Houdi

The History of Power Houdi

Houdiniのアイコン的存在であるPower Houdiは、2023年に発売から20周年を迎えました。20年という年月を重ねても特別であり、愛され続けるPower Houdiの、誕生の背景をひもといてみましょう。

The Story Behind Magical Houdi

Houdiniの物語は1980年代後半、若く意欲的な女性クライマーの冒険から始まりました。彼女の名前はLotta Giornofelice (ロッタ・ジョルノフェリーチェ)。ロッタは、着心地が良くて岩にこすれても摩耗せず、どんなムーブも妨げない、機能的なウエア選びにいつも苦労していました。そこで、ロッタは1993年、自分や友人たちのハードなアクティビティに欠かせないウエアを作るためにHoudiniを立ち上げたのです。ミッドレイヤーが薄手の布団ほどに分厚くかさばる衣類だったその当時、女性が主導するアウトドアブランドも、通気性という概念も、まだ世の中に登場していませんでした。

ロッタ・ジョルノフェリーチェ(左)とインド・シッキムの王女、ホープ・レーズム・ナムゲル(右)、1996年

動きやすく快適で、あらゆるアクティビティにフィットする通気性を備えたウエアは、ロッタの周りのクライマーやスキーヤーのコミュニティに、瞬く間に広まりました。自分たちが着たいウエアを妥協することなくデザインし、ラインナップを徐々に増やしていたちょうどその頃、ロックトリップに出かけたニュージーランドで、ロッタはPolartec® Power Stretch® Pro™という革新的な素材を手にします。この素材は、ロッタが頭の中で描いていた、理想的なミッドレイヤーにぴったりのように思えました。フィット感に優れ、レイヤリングしやすく、街でもバックカントリーでも頼りになり、ずっと触れていたいほどに柔らかく、まるで魔法のような……。それは、ロッタが理想とするミッドレイヤーに欠けていた、最後のピースだったのです。

フリースウエアと手作りのフリースフラワーを飾った初期の展示会ブース(左)、Houdini創設者のロッタ(右)

こうして、魔法のような着心地をもつ完璧なミッドレイヤーの開発がスタートしました。2001年、ようやく完成したデザインの最終段階で、そのプロトタイプのフリースジャケットに初めて袖を通したテスターの1人が、国際山岳ガイド連盟の山岳ガイド資格を持つCarl Lundberg (カール・ルンドベリ)。カールはその後の10年間、肌寒い季節はほぼ毎日これを着て、4つの大陸を旅しています。

「このジャケットには、世界のあちこちで経験した冒険がぎっしり詰まっています。ろくな装備を持たず、衝動的に出かけてしまったカリフォルニアのマウント・ホイットニー (標高4,421m) で寒さから守ってくれたのも、ノルウェーのシェラーグで、高さ950mのビッグウォールにポータレッジ(岩壁に吊るして使う、簡易的なクライミングテント)を取り付けて一夜を明かしたとき、毛布に包まれているような安心感を与えてくれたのも、このジャケットでした」(カール)

カールのプロトタイプと同じく初期に作られたPower Houdi

テスターとしての役目を終えた後もカールはこのジャケットを手放さず、バックパックにしのばせてさまざまな冒険に出かけました。

「日本でパウダースノーを滑ったり、ハワイのビーチで寝転がったり、このジャケットとたくさんの思い出を共有してきました。いろいろなものの消費が加速度的に進む現代において、一つの製品と長くよい関係を築くことは、環境負荷を低減するだけでなく、純粋に美しく、エモーショナルな体験であると断言できます」(カール)

UIAGM国際山岳ガイドのカール・ルンドベリ

The Secret for Long Life

発売から20年間、200以上ものカラーバリエーションで作られてきたPower Houdi。その1着あたりの平均着用回数は1287回、製品寿命は約10.2年。HoudiniのCEOを務めるEva Karlsson (エヴァ・カールソン) は、これを「言葉を超越した快適さ」と言い表しています。実は、Power Houdiのデザインも素材も、生まれてからいままでほぼ一緒。一部のディテールをのぞき、ファーストエディションの設計が踏襲されています。素材は、4方向への伸縮性と優れた保温性、耐久性、速乾性、耐摩耗性を備えるPolartec® Power Stretch® Pro™。現在においても、世界最高峰のテクニカルミッドレイヤー素材の一つとされています。一方、デザインにはHoudini独自の哲学が継承されています。

Houdini現CEOのエヴァ・カールソン

「Houdiniが拠点を構えるストックホルムは、都市と自然がシームレスにつながっていますから、仕事、遊び、カルチャー、すべてにおいて、都市と自然を自由に行き来できることが大切です。こうしたライフスタイルを前提に、私たちは『誰かのチャンスや可能性を広げるワードローブ』を念頭にデザインしています。モダンでミニマルなルックスと鋼のような耐久性を兼ね備え、都市生活にもアウトドアアクティビティにもフィットし、かつ、あらゆるシーンで自分を満足させられるもの。なかでもPower Houdiは、私たちのラインナップのアイコンであり続けます。だって、1287回も着用してもらえるのは、快適さと頑丈さの証しなんですから」(エヴァ)

Power Houdiを言い換えるなら、それは究極の“スローファッション”。自然と調和したデザイン、長く使うことができて自然が求める機能を備えたウエアが詰まったワードローブこそ、Houdiniが考える持続可能性なのです。

以上がPower Houdi誕生の背景と20年間の歴史、そして愛され続けることの秘密ですが、それはこの先の未来へとずっと繋がっていきます。凍てつくような1287日の早朝ランニング。焚き火を囲んで過ごした1287回の夜。雪面にスキーで描いた1287本の最高のシュプール。あなたと一緒にいくつもの忘れ難い思い出を経験したジャケットは、ウエアを超えた相棒としてこれからもクローゼットの中心に存在し続けてくれることでしょう。

Power Houdi

M’s Power Houdi

Power Houdi

W’s Power Houdi

Polartec