Arata Suzumura

「若いころに白馬のバックカントリーに魅了されたなかで、一番気になっていたラインが不帰2峰であった。どうしても自分の力で行きたくて何年もチェックしながらアプローチしていた」

Photo: Kazuyoshi Sasao

Photo: Kazuyoshi Sasao


鈴村 新

Arata Suzumura

1977年、愛知県生まれ。北米でのバムライフの後、ベースを白馬に構え、世界中の雪と波を追い続けているソウルスノーサーファー。現在は長野県小谷村でお宿の「WOOD」を経営。


Photo: Kazuyoshi Sasao

-お気に入りのヘストラ製品

「Army Leather Tundra」

クラシックなデザインにオイルを塗れば塗るほど自分の手形に近づくゴートアーミーレザーというモダンなフィールドグローブは、バックカントリーでの保温性能を確保し、ワークグローブとしての耐久性もアップデートされている。


「Alpine Short Gore-Tex」

冬季の登山からトレッキング、ゲレンデのクルージングまで幅広く、一番使用頻度の高いグローブで脱着の早さと柔らかさが気にいっている。そして軽量でGore-Texを内側のメンブレンに使用しておりロフトのボリュームもちょうどよく、シンプルなデザインが飽きのこないシルエットを演出している。


「Ergo Grip Active」

作業性能がよく細身のシルエットでストレスのない裁断がグリップ力を高めている。春の山行や夏の林業でも愛用しており、チェーンソーのアクセルワークは高いレスポンスでより安全に作業がおこなえ、3D形状に裁断されたエルゴグリップを使用していて、レトロなデザインが好み。

Photo: Kazuyoshi Sasao

-1年間のライフサイクル

年間を通じて季節に合わせた生活をおくっている。自然のサイクルに合わせた生活をおくっているといった方がいいのか。30年近く雪山と波乗りにすべての時間を費やすことを選んできても、まだまだやり足りないことばかりだが、波を追いかけて世界中をハンティングしたり、ある山に夢中になりそこを滑り降りるための人生をかけたアプローチの仕方など、楽しくて仕方がない。

Photo: Kazuyoshi Sasao

雪が降らない時期は南アルプスの源流をベースに伐採の仕事に取り組んでいることから、自然の中でおこなわれている不自然な動きなども見ることができている。間伐の必要性や、ダムなどの開発に関わる自然のリズムを変えてしまうことなど、山に中にいると見えてきてしまうものがあるからだ。

Photo: Kazuyoshi Sasao

また僕らが“生きる”ための大人の食育を、夏から秋にかけて林業と同時に狩猟をとおして学び、その重要性や効果効能を自分自身で人体実験してもいる。獲れたての熊は上質で捨てる部分はなく、すべて頂くという考えをもち毛皮やクリームなどのアイテムにもなる。

鹿の解体。鹿の毛皮も皮革素材として利用ができる。

秋になればサルナシや熊イチゴなどの果実が収穫でき、ワインや酵素ジュースなどもできる。昔の人々はこうして暮らしていたのだろう。近年は添加物の最盛期を迎え、味覚と僕が学んでいる大人の食育とはかけ離れていっているような気がしているので、自分の取り組みが少しでも伝わればいいなと思っている。

こうした観点は、合皮なのか本革なのかというグローブの選択にも繋がっていて、自分の手に馴染んでくる感触や皮膚のあたりなどは、人間と動物の近さを感じられる瞬間でもある。

雪が降り始めるころ、蓄えた薪たちに感謝しながら暖をとり、自然のエネルギーの優しさや大切さを確認しながら雪が積もるのを待っている。

林業に携わることで自然のリズムを感じ、滑るための身体もつくられる。 Photo: Kazuyoshi Sasao

-ホームマウンテンのこと

暮らしている奥白馬の魅力は、日本海側に近いことから内陸とはひと味違う雪が降り、美しい自然が守られていて樹林帯などは豊富な地形がある。そして北アルプスの魅力は長く連なる後立山連峰の山岳滑走エリアのバリエーションの豊かさだ。

栂池BCでのフェイスショット。ダケカンバの原生林とディープな雪がこの場所にはある。 Photo: Ryuta Asashi


白川郷の朝焼け。滑りたいラインを求め、白馬以外のエリアへと遠征することも多い。 Photo: Ryuta Asashi

-山と海から得ているもの

学校では教わらなかったことやライフスタイルの在り方。

Photo: Kazuyoshi Sasao

-もっとも印象深いライディング

白馬不帰2峰を単独滑降した瞬間。若いころに白馬のバックカントリーに魅了されたなかで、一番気になっていたラインが不帰2峰であった。どうしても自分の力で行きたくて何年もチェックしながらアプローチしていた。

近年は撮影やグループでの滑降がほとんどだが、そうではなく、当時は自分自身を試す最高のスポットだと思っていたため、グループでの山行きは断っていた。単独の山行きに対しては反論もあった。何か起きたら他の人にも迷惑だと。

だが自分が納得いかない場合の引き返すという判断が、複数の判断によってかき消されることもあり、それならば一人の方が退散もしやすく安全だと考えての行動だ。もちろん撮影で作品を残したいがために少々のプッシュも必要に迫られる場面も経験してきたうえで。

これまでに見てきた誇りに思える先人の山行きが、このときの滑降と判断の基準を僕に作ってくれていたのだと思う。

Photo: Taichi “Johnny” Nishida

-10年後のあなたは

今と同様、自然のリズムに合わせられることのできるライフスタイルを送りながら、健康であり、新しいことにもチャレンジできる忍耐力を備え、自然に生かされていることに感謝して、自然に恩返しできるように生きていきたい。

Photo: Kazuyoshi Sasao


-Text by

鈴村 新 / Arata Suzumura
@aratasuzumura




-Photo by

笹尾 和義 / Kazuyoshi Sasao
instagram @330photogalleries


旭 立太 / Ryuta Asashi
instagram @ryuta_asahi
http://www.ne.jp/asahi/rhythm/works/index.html


西田 太一 / Taichi “Johnny” Nishida
https://mainline-hakuba.com


鈴村 直美 / Naomi Suzumura
instagram @naomisuzumura