第三章「おふろのつくりかた」
ようやく完結編です。
さいごにヤマの中での露天風呂をつくりかたをお教えします。
(1). 河原をひたすら掘る。
(2). 適温のお湯を入れる。
(3). あわてずに服を脱ぐ。
いや、コレでホントにできるんです。
(1)の工程は馬車馬のように働く若手を連れて行けばなんとかなります。
(3)の工程ができないひとは、山に来ている場合じゃないとおもいます。
ということは、とってもたいせつなのは(2)の工程だということですね。
山中でボコボコ湧く源泉というのは、基本的にものすごく熱いのです。まあ源泉があるって知ってわざわざ行くんですから当然なんですが、今回の場所なんて90度近くあったんじゃないでしょうか。温泉卵を作りたい、とわざわざ生卵を慎重に担いでいったのに、源泉に浸してしばらくボケっとしてたら、ただのゆで卵になっちゃったほどでした。
では、どうやって優雅に入浴できるようになるかといいますと、大抵の源泉は河原にあるので、川の水を引き込むことで調節が可能なわけです。
まずは第一の課題として「あらゆる道具を駆使してどうやって水と湯を湯船に運んでくるのか?」という難問をクリアしないと、たゆたう秋の湯煙を肴に熱燗を傾け、あらイケナイちょっと酔ってきちゃったわ、という至福のひとときは永遠の夢となってしまいます。
さらに、です。湯と水を双方をそれぞれそのまま湯船に入れても、なんというかあれは永遠の謎なんですが、うまく混ざらないのですね。
熱いお湯は水面の上の方にたまり、冷たい川の水がケツの方に滞留し、なんだかずっと手足をバタバタ動かして全体をかき混ぜていないと入浴できないのです。まったく優雅じゃないのです。イケナイ酔い方ができないのです。
つまり第二の課題として「どうやって適温のお湯を注ぎ込みそれを維持するか?」という、このプロジェクトの重大で決定的な必須条件が行く手を阻みます。
これをいかに、真剣にそれでいて無邪気に、あらゆる知恵を振り絞って子供みたいに、金を使わずそのへんにあるものを利用して、完成へ向けて努力できるか、ということが、参加者のみなさんには問われるのです。
まあ、答えはすごく簡単なわけでして、湯船に入れる前に混ぜちゃえばいいんです。
ただ、出発前の装備買い出しの際に、真剣な眼でふさわしい道具を探し、ときにはその使用方法において激論が交わされる場所が、立派なアウトドアショップではなくて、会社の近くのホームセンターや中華街のお土産屋であることは、それでいいのだろうかとも最近思います。
ま、できちゃうと、どうでもいいんですけれど。
なにより、ほんのり酔った湯上がりに焚き火のほとりの暗闇で仲間と見る雪の映像は、Pricelessです。
次は何をしようかなともう落ち着かない副部長でした。
また来年お会いしましょう。
HODAKA
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