いつもヤマ登りばかりしているワタクシですが、登山の次に好きなのはカヤックです。
川や海に対する目線、移動してゆく風景、ここの先の向こうへ行ける感覚、カヤックにはトレッキングと似ているところがあるかもしれません。
その昔は、テントも食糧もいっさいがっさいフネに積んで移動する旅する川カヌーが好きで、四万十川やら釧路川やらを巡り歩いていた時期もあります。そのとき愛読していたのが「カヌーライフ」というマニアック雑誌で、編集の方に旅に連れて行ってもらったりしていました。
清流やトロピカルな水面がカラーで溢れるその雑誌の巻末の方に「日本どぶ川紀行」という連載がありました。神田川とか松江城の堀とか横浜の大岡川とか、沈したら確実にビョーキになりそうなヘンテコなところを漕いでいる連載で、当時の僕はコレを大笑いしながら読んでいました。まさか十年後にその執筆者と同僚になって海外アウトドアブランドのウェアを売るとは想像もできませんでした。
エンドーとオオウチの二十代の頃の甘酸っぱい記憶です。
今回はそんな誰にも感銘を与えない甘酸っぱい記憶とは関係ありません。
ほんの束の間の休みを同僚や仲間と合わせて、西伊豆へカヤック・キャンプ・トリップ。
西伊豆、舐めてました。
カンペキです。
5キロ漕ぐごとに出てくる集落はどこも、カヤックを暖かく迎えてくれ、温泉が沸いています。漕ぐ→風呂→漕ぐ→風呂、永遠のリフレインを繰り返します。
そうやって進んだ、入り組んだ海岸線の先には、車や人道からは離れた誰も来ない無人の浜辺がありました。
借景は秋晴れの海の彼方に沈むサンセット、誰もいない浜辺で焚き火を囲み、波の音と焚き火のはぜる音だけが響く。傍らには小さなテントとシエラカップ。漁港で買った伊勢エビを丸焼きにしてかぶりつき、金目鯛のあら汁を肴に酒を飲む。
「あああ、うまいですなあ」
「あああ、いやはやうまいですなあ」
「いまとりあえずひとつも不満はありませんなあ」
「いえいえなにをおっしゃいますかわたしの方こそですなあ」
と、コレも永遠のリフレインを繰り返します。
自動でその時の心象にぴったりの曲を唄ってくれる『センザキ・ジュークボックス』は、ラム酒を入れると動きます。
非売品ですが、製造年度がいささか古く、中身は昭和歌謡が中心です。
それが、またいい。
hodaka.
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